「寝ても疲れが取れない」
「朝から身体が重い」
「以前よりストレスに弱くなった」
「疲れているのに眠りが浅い」
「めまいや立ちくらみも増えてきた」
このような慢性的な疲労が続いている方をみていると、東洋医学でいう**血虚(けっきょ)**の症状が重なっていることがあります。
一方、長期間のストレスによって身体のストレス対応力が低下した状態は、一般的に**副腎疲労(アドレナルファティーグ)**という言葉で表現されることがあります。
血虚と副腎疲労は同じものではありません。
しかし、この二つには大きな共通点があります。
それが、
「身体の消耗」
です。
今回は、血虚と副腎疲労の関係に絞って解説します。
血虚について症状・原因・改善方法をまとめて知りたい方はこちらをご覧ください。
→ 血虚とは?症状・原因・改善方法を東洋医学からわかりやすく解説
副腎疲労とは「ストレスに対応し続けた身体」
私たちの身体には、ストレスが加わったときに対応する仕組みがあります。
その中心となるのが、
視床下部―下垂体―副腎
をつなぐHPA軸です。
副腎から分泌されるコルチゾールも、このストレス応答に重要な役割を持っています。
ストレス研究で知られるハンス・セリエは、ストレスに対する身体の変化を、
警告反応期
↓
抵抗期
↓
疲憊期(消耗期)
という流れで考えました。
短期間のストレスであれば、身体は対応したあと元の状態へ戻っていきます。
しかし、
・仕事や人間関係による長期間のストレス
・過労
・慢性的な睡眠不足
・身体的な負担
などが続けば、身体は長期間ストレスに対応し続けることになります。
その結果、
「以前より疲れやすい」
「朝起きられない」
「寝ても回復しない」
「少しのストレスでも体調を崩す」
といった状態が現れることがあります。
当院では、副腎疲労を単純に「副腎という臓器が疲れている状態」ではなく、
慢性的なストレスによってHPA軸を中心としたストレスへの対応がうまくいかなくなり、身体の消耗が強くなっている状態
として捉えています。
※副腎疲労は正式な医学的診断名ではありませんが、この記事では慢性的なストレスによる消耗状態を説明する言葉として使用しています。
血虚とは「身体を養う余裕が少ない状態」
東洋医学でいう「血」は、西洋医学の血液とまったく同じ意味ではありません。
血液としての意味を含みながら、
身体のさまざまな場所を養い、心身を安定させるもの
として考えます。
そのため血虚になると、
・めまい、立ちくらみ
・目が疲れる
・肌や髪が乾燥する
・爪が割れやすい
・月経量が少なくなる
・眠りが浅くなる
・不安になりやすい
といった症状が現れることがあります。
つまり血虚とは、
身体を十分に養えるだけの余力が少なくなった状態
と考えると分かりやすいでしょう。
血虚の具体的な症状についてはこちらをご覧ください。
血虚には「作れない血虚」と「消耗する血虚」がある
血虚というと、
「栄養不足」
「鉄不足」
「食事が足りていない」
というイメージが強いと思います。
もちろん、食事量が少なかったり、胃腸が弱っていたりして、十分に血を作れなくなっているケースもあります。
これは、
「作れない血虚」
と考えることができます。
一方で、もう一つ重要なのが、
「消耗する血虚」
です。
身体はある程度血を作れていても、それ以上に消耗が続いていれば、次第に身体を養う余力がなくなっていきます。
副腎疲労と血虚が重なっている方では、この「消耗」が強くなっていることがあります。
副腎疲労と血虚をつなぐのは「消耗」
強いストレスが長期間続いているとします。
最初のうちは、
「疲れているけれど動ける」
「寝れば何とか回復する」
という状態かもしれません。
しかし、それでも休まずに生活を続けていると、
少しずつ回復が追いつかなくなってきます。
そして、
・疲れが抜けない
・眠りが浅くなる
・めまいが増える
・月経量が減ってくる
・肌や髪が乾燥する
・不安感が強くなる
といった血虚の症状が重なってくることがあります。
東洋医学的に考えると、
長期間ストレスに対応し続けることで、身体を養うための「血」まで消耗してきた状態
としてみることができます。
つまり、
慢性的なストレス
↓
身体が対応し続ける
↓
回復より消耗が上回る
↓
身体を養う余裕が減る
↓
血虚の症状が強くなる
という流れです。
この「身体を養う余裕がなくなっている」という部分が、血虚と副腎疲労をつなぐポイントです。
血虚が重なると「疲れているのに休めない」
副腎疲労と血虚が重なった方に特徴的なのが、
身体は疲れているのに、うまく休めない
という状態です。
例えば、
「布団に入っても頭が動いている」
「夜中に何度も目が覚める」
「夢をたくさん見る」
「眠ったはずなのに朝から疲れている」
という状態です。
東洋医学では、「血」は身体だけでなく精神活動も養うと考えます。
そのため血虚になると、身体は疲れているのに精神的には落ち着かず、睡眠が浅くなることがあります。
すると、
ストレス
↓
消耗する
↓
血虚が強くなる
↓
眠りが浅くなる
↓
十分に回復できない
↓
さらに消耗する
という循環に入りやすくなります。
血虚と睡眠や自律神経についてはこちらでも解説しています。
「以前は大丈夫だったのに」が一つのサイン
副腎疲労のような消耗状態では、
「昔は大丈夫だったのに、今はできない」
という変化が一つの特徴になります。
例えば、
「以前は忙しくても平気だった」
「少し寝れば回復していた」
「ストレスがあっても身体には出なかった」
という方が、
「少し無理をすると数日寝込む」
「休日に寝ても回復しない」
「精神的なストレスがすぐ身体に出る」
という状態へ変わってくる。
これは単なる「体力不足」ではなく、
身体が長期間のストレスに対応してきた結果、回復するための余力そのものが少なくなっている
可能性があります。
そこに、
・めまい
・眠りの浅さ
・肌や髪の変化
・月経量の減少
などが重なれば、東洋医学では血虚という視点も加えて身体をみていきます。
血虚と副腎疲労は同じものではない
血虚と副腎疲労は、同じ状態を別の言葉で表現しているわけではありません。
血虚は東洋医学の体質概念です。
副腎疲労は、慢性的なストレスに対する身体の消耗をHPA軸などの視点から捉えた考え方です。
身体を見る「ものさし」が違います。
しかし臨床では、
長期間ストレスに対応してきた身体に、血虚の症状が重なっている
というケースがあります。
この二つを無理に同じものとして説明する必要はありません。
大切なのは、
東洋医学と現代的なストレス反応という違う視点から見ても、「身体の消耗」という共通点が見えてくる
ということです。
まとめ|血虚と副腎疲労の共通点は「回復より消耗が上回っていること」
血虚と副腎疲労は同じものではありません。
しかし、この二つには、
身体の回復よりも消耗が上回っている
という共通点があります。
血虚には、
十分に血を作れない「作れない血虚」
と、
長期間のストレスや過労などによって身体を養うものが消耗している「消耗する血虚」
があります。
副腎疲労と血虚が重なっている方では、後者の「消耗する血虚」が強くなっていることがあります。
特に、
「以前は大丈夫だったのに疲れやすくなった」
「寝ても身体が回復しない」
「疲れているのに眠れない」
「ストレスが続いてからめまいや月経の変化が出てきた」
という場合には、単純な栄養不足だけではなく、
身体が長期間ストレスに対応し続けた結果としての消耗
という視点も必要です。
血虚について症状・原因・改善方法をまとめて知りたい方はこちらをご覧ください。
