「しっかり食べているのに貧血気味と言われる」
「栄養には気をつけているのに、疲れやすさやめまいがなかなか改善しない」
このような方は少なくありません。
東洋医学では、血虚(けっきょ)の原因を単純な栄養不足だけでは考えません。
大切なのは、
「血の材料を摂っているか」だけではなく、「身体の中で血を作れる状態になっているか」
ということです。
血虚について、症状・原因・改善方法まで全体像を知りたい方は、まずこちらの記事をご覧ください。
→ 血虚とは?症状・原因・改善方法を東洋医学からわかりやすく解説
血はどこで作られるのか?
東洋医学では、食事から得たものをもとにして、身体を養う「血」が作られると考えます。
その中心となるのが**脾胃(ひい)**です。
ここでいう「脾」は、現代医学の脾臓そのものではなく、食べ物を消化し、必要なものを取り込み、身体に利用できる形へ変えていく働きを含んだ東洋医学的な概念です。
流れとしては、
食事
↓
消化
↓
吸収
↓
身体で利用する
↓
血を養う
となります。
つまり、食べ物を口に入れただけで血が作られるわけではありません。
消化・吸収・利用という過程が正常に働いて、はじめて身体を養う材料になります。
血虚になる主な3つの原因
臨床でよくみられる原因は、大きく3つに分けられます。
① 食事量やエネルギーの不足
まず考えたいのが、材料そのものが足りているかどうかです。
例えば、
・食事量が少ない
・朝食を抜くことが多い
・主食を極端に減らしている
・慢性的にエネルギー不足になっている
といった状態です。
特に身体を維持するためのエネルギーが不足すると、身体は生きるために優先度の高いところへエネルギーを回すようになります。
その結果、肌や髪、月経、回復力などに影響が出ることがあります。
血を作るためには、鉄やタンパク質だけでなく、そもそも身体を動かすためのエネルギーが足りていることが大前提です。
② 消化する力が落ちている
ここは非常に重要です。
どれだけ栄養価の高いものを食べても、消化できなければ身体は十分に利用できません。
例えば、
・胃もたれしやすい
・食後にお腹が重い
・食欲が安定しない
・食べると疲れる
・食後に強く眠くなる
といった症状がある場合、胃腸の働きが低下している可能性があります。
現代的には、胃酸や消化酵素などさまざまな要素が食物の分解に関わります。
東洋医学では、こうした「食べたものを身体に必要なものへ変える働き」を脾胃の働きとして捉えます。
つまり、
食べている量と、身体が受け取れている量は同じではありません。
③ 吸収する力が落ちている
消化できても、その先の腸で十分に吸収できなければ、やはり身体を養うことはできません。
例えば、
・便秘が続いている
・軟便や下痢になりやすい
・ガスが多い
・食後にお腹が張る
・腸の調子が安定しない
といった方では、腸内環境も含めて身体を見る必要があります。
「栄養を摂っているのに状態が変わらない」という場合には、摂取量を増やす前に、腸が受け取れる状態なのかを考えることも大切です。
血虚と腸内環境についてはこちらで詳しく解説しています。
さらに重要なのが「気虚」
血虚の原因を考えるうえで、当院が特に大切にしているのが気虚との関係です。
消化・吸収にもエネルギーが必要だからです。
例えば、
気虚
↓
胃腸を働かせる力が低下
↓
消化機能が落ちる
↓
吸収できる栄養が減る
↓
身体を十分に養えない
↓
血虚
という流れが考えられます。
つまり、血虚の背景に気虚が隠れていることは珍しくありません。
この場合、血を補うことだけを考えるよりも、身体を動かすエネルギーや胃腸の働きを先に立て直したほうがよいことがあります。
気虚と血虚の違いについてはこちらをご覧ください。
よくある間違い|血虚だから鉄やタンパク質を増やす
血虚というと、
・鉄分を増やす
・肉や魚を増やす
・タンパク質を増やす
・サプリメントを追加する
といった対策を考えやすいと思います。
もちろん、実際に不足している栄養がある場合には補うことも必要です。
ただし、
「足りないから入れる」だけでは改善しないケースもあります。
なぜなら、その前段階にある、
・消化できない
・吸収できない
・身体の中で利用できない
という問題が残っていることがあるからです。
特に胃腸が弱っている方に栄養を急に増やすと、かえって胃もたれや腹部膨満感が強くなることもあります。
「血虚」と「貧血」は同じではありません
ここも重要です。
東洋医学の血虚と、現代医学でいう貧血は同じものではありません。
血液検査で貧血がなくても、東洋医学的には血虚と考えられる状態があります。
一方で、
・強いめまい
・動悸
・息切れ
・極端な疲労感
・月経量が非常に多い
などがある場合には、鉄欠乏性貧血など医学的な問題がないか確認することも大切です。
東洋医学的な体質だけで判断せず、必要な場合には医療機関で検査を受けることも重要です。
血虚に現れやすい症状についてはこちらでもまとめています。
血虚改善では「順番」が重要
血虚改善では、
何を摂るか以上に、どの順番で身体を整えるか
が重要なことがあります。
一つの考え方として、
① 身体を動かすエネルギーを確保する
↓
② 胃腸が消化できる状態を整える
↓
③ 腸から吸収できる状態を整える
↓
④ 必要な栄養を補う
↓
⑤ 身体を十分に養える状態へつなげる
という流れがあります。
胃腸が弱っているところへ、いきなり大量の栄養を入れるのではありません。
まず**「栄養を処理できる身体」にすること**が重要です。
血虚改善の順番についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
→ 血虚改善の正しい順番|いきなり栄養を増やしてはいけない理由
当院での血虚へのアプローチ
はり灸院あずでは、血虚を単なる「栄養不足」として考えるのではなく、
・食事量やエネルギー不足
・胃腸機能
・腸内環境
・自律神経
・睡眠
・身体の消耗
・月経の状態
などを組み合わせて身体全体を見ています。
鍼灸でも単純に「血を補う」という考え方だけではなく、胃腸や自律神経など、身体が栄養を受け取れる土台を整えることを重視します。
食事や栄養サポートについても、その方の胃腸の状態を見ながら進めていきます。
まとめ|大切なのは「血が作れる身体」になっているか
血虚は、
・食事が足りない
・消化できない
・吸収できない
・身体のエネルギーが不足している
といった複数の要因が重なって起こることがあります。
そのため、
「血虚だから鉄を摂る」
「血虚だからタンパク質を増やす」
だけでは十分とは限りません。
大切なのは、
食べる
↓
消化する
↓
吸収する
↓
身体で利用する
↓
血を養う
という一連の流れがうまく働いているかを見ることです。
血虚を改善するためには、何が不足しているのかだけではなく、
「なぜ不足する身体になっているのか」
という一つ前の段階を見ることが重要です。
血虚について症状・原因・改善方法などをまとめて知りたい方はこちらをご覧ください。
