「腸活を始めたら肌がきれいになった」
そんな話を聞いたことはありませんか?
一方で、
「ヨーグルトを食べているのに肌荒れが改善しない」
「食物繊維を増やしたら、逆にお腹が張るようになった」
という方もいます。
では、腸を整えると本当に肌は変わるのでしょうか?
結論から言えば、腸と肌には深い関係があります。
ただし、「腸活=善玉菌を増やせばよい」という単純なものではありません。
大切なのは、食べたものをきちんと消化し、必要な栄養を吸収し、不要なものを排出できる腸の状態をつくることです。
腸と肌はつながっている
腸は、食べ物から栄養を吸収する場所です。
肌をつくるためにも、
- タンパク質
- 鉄
- 亜鉛
- ビタミンB群
- ビタミンA
- ビタミンC
- 必須脂肪酸
など、さまざまな栄養素が必要になります。
どれだけ栄養のある食事をしていても、消化・吸収がうまくいかなければ、肌をつくる材料を十分に利用することができません。
そのため、肌質改善を考えるときには、**「何を食べるか」だけでなく「きちんと消化・吸収できているか」**を見ることが大切です。
東洋医学では「脾」が重要
東洋医学では、現代医学でいう胃腸の働きに近い役割を「脾(ひ)」という概念で考えます。
脾には、食べ物から必要なものを取り出し、全身へ運ぶ働きがあるとされています。
そのため、脾の働きが弱る「脾虚」になると、
- 食後に眠くなる
- お腹が張る
- 軟便になりやすい
- 疲れやすい
- むくみやすい
- 肌の調子が安定しない
などの変化が現れることがあります。
つまり、東洋医学では昔から**「胃腸を整えることが体全体を整えることにつながる」**と考えてきたのです。
腸内環境が乱れると肌にも影響する
腸には非常に多くの細菌が存在しています。
腸内細菌は、食物繊維などを利用してさまざまな代謝産物を作ります。
その代表的なものが、短鎖脂肪酸です。
短鎖脂肪酸には、
- 腸管の環境を支える
- 腸のバリア機能を維持する
- 免疫機能を調整する
など、さまざまな働きがあります。
そのため、腸内細菌のバランスが乱れると、腸だけでなく全身の状態にも影響する可能性があります。
肌もその一つです。
「便秘=肌荒れ」とは限らない
「便秘だから肌が荒れる」とよく言われます。
もちろん便通の乱れは腸内環境を考えるうえで重要ですが、便秘だけを改善すれば肌がきれいになるとは限りません。
例えば、
- 消化力が低下している
- 食事量が少ない
- タンパク質が不足している
- 胃腸が冷えている
- ストレスが強い
- 睡眠不足
などが背景にあれば、便通だけを改善しても根本的な問題は残ります。
そのため、「毎日便が出ているから腸は健康」とも言い切れません。
食物繊維を増やせばいいわけではない
腸活というと、「食物繊維をたくさん摂りましょう」と言われることがあります。
しかし、胃腸の状態によっては、食物繊維を増やすことで、
- お腹が張る
- ガスが増える
- 腹痛が起こる
- 便通が悪化する
こともあります。
特に、消化・吸収が落ちている方では、まず胃腸が処理できる食事量や内容に整えることが重要です。
「腸に良い食品だから食べる」のではなく、**「今の自分の腸が処理できる食品なのか」**という視点も必要です。
発酵食品も人によって合う・合わないがある
ヨーグルト、納豆、味噌、キムチなど、発酵食品は腸活の代表的な食品です。
しかし、発酵食品なら誰にでも合うわけではありません。
例えば、
- 食べるとお腹が張る
- ガスが増える
- 下痢になる
- 皮膚症状が悪化する
などの変化がある場合は、量や種類を見直す必要があります。
腸活は「何を食べるか」だけでなく、自分の消化能力に合わせることが大切です。
自律神経も腸と肌をつないでいる
腸と肌の関係を考えるうえで、自律神経も無視できません。
ストレスが続くと、
- 胃腸の働きが低下する
- 腸の動きが乱れる
- 睡眠の質が低下する
- 食欲が変化する
など、さまざまな変化が起こります。
その結果、消化・吸収や腸内環境が乱れ、肌にも影響が出ることがあります。
だからこそ、腸活では食事だけではなく、睡眠やストレス、自律神経まで含めて考えることが大切です。
腸と肝臓も深く関係している
腸から吸収されたものの多くは、門脈を通って肝臓へ運ばれます。
肝臓では、栄養素の代謝だけでなく、さまざまな物質の処理が行われています。
また、女性ホルモンの代謝にも肝臓が関わっています。
そのため、
腸 → 肝臓 → ホルモン・栄養代謝 → 肌
というつながりから考えることもできます。
特に妊活中の方では、腸・肝臓・女性ホルモンを別々に考えるのではなく、一つの流れとして見ることが重要です。
東洋医学では「脾虚→湿」という考え方もある
前回の記事で「湿熱」についてご紹介しました。
実は、腸と肌の関係を考えるうえでも「脾」は重要です。
脾の働きが弱ると、体内の水分代謝がうまくいかず、「湿」が生まれやすくなると東洋医学では考えます。
この湿が長く停滞すると、湿熱へと発展することがあります。
すると、
- ニキビ
- 皮脂
- むくみ
- 体の重さ
- お腹の張り
などが現れやすくなります。
つまり、
胃腸の弱り → 湿 → 湿熱 → 肌トラブル
という流れで考えることもできるのです。
腸活で肌を変えるなら、まず「消化」から
腸活というと、善玉菌や食物繊維ばかりに注目しがちです。
しかし、本当に大切なのは、
食べる → 消化する → 吸収する → 利用する → 排出する
という一連の流れがスムーズに行われていることです。
例えば、
「タンパク質を増やしましょう」
と言われても、胃腸が弱っていて消化できなければ、かえって負担になることがあります。
だからこそ、腸活を始める前に、
- 食後にお腹が張らないか
- 食後に強い眠気がないか
- 便の状態はどうか
- ガスが多くないか
- 胃もたれがないか
など、自分の消化状態を確認することが大切です。
当院で大切にしていること
当院では、肌荒れの方に対して「腸活をしましょう」とだけお伝えすることはありません。
まず、
- 胃腸の状態
- 食事内容
- 消化・吸収の状態
- 便通
- 睡眠
- ストレス
- 自律神経
- 東洋医学的な体質
などを確認します。
そのうえで、その方の状態に合った食事や生活習慣を考えていきます。
鍼灸では、胃腸や自律神経の働きを整え、体全体のバランスを調整することを目指します。
腸を整えることは、単に「便通を良くする」ことではありません。
体が必要なものをきちんと取り込み、不要なものを排出できる状態をつくること。
それが、肌質改善にもつながっていくと考えています。
まとめ
腸と肌には深い関係があります。
しかし、「腸活=ヨーグルト」「腸活=食物繊維」という単純なものではありません。
大切なのは、
- 消化できること
- 必要な栄養を吸収できること
- 腸内環境が整っていること
- きちんと排出できること
- 自律神経が安定していること
です。
そして東洋医学では、これらを「脾」という視点から捉えてきました。
肌荒れを繰り返している方は、肌だけを見るのではなく、まず「お腹の状態」に目を向けてみるのも一つの方法です。
肌を変えたいなら、肌だけを見ない。
それが、体質改善から考える肌質改善の基本です。
次回予告
「栄養不足が肌に与える影響 〜食べているのに肌がきれいにならないのはなぜ?〜」
次回は、タンパク質・鉄・亜鉛・ビタミンB群・ビタミンA・ビタミンCなど、肌をつくる栄養素について解説します。
さらに、「栄養を摂ること」と「栄養を利用できること」は違うという視点から、胃腸や自律神経との関係についても詳しくご紹介します。
