「そんなに食べていないのに痩せません」
ダイエットの相談では、よく聞く言葉です。
実際、食事量を減らして最初は順調に体重が落ちたものの、途中からほとんど変化しなくなってしまう方もいます。
もちろん、体重が減るかどうかにはエネルギー収支が大きく関係します。
しかし、長期間の食事制限では消費するエネルギーも一緒に低下してしまうことがあるため、単純に「もっと食べる量を減らせばいい」とは限りません。
今回は、食べていないのに痩せにくくなる背景について考えてみます。
食事を減らすと体は省エネになる
食事量を減らせば、摂取エネルギーが減ります。
そのためダイエットの初期には体重が落ちやすくなります。
ところが、その状態が続くと体も変化します。
人間の体には、エネルギー不足に対して消費量を調節する仕組みがあります。
例えば、
- 無意識の活動量が減る
- 疲れやすくなる
- 筋肉量が減る
- 体温産生が低下する
- 運動する元気がなくなる
などです。
こうした変化によって、最初と同じ食事量でも体重が減りにくくなることがあります。
これは一般的に**適応性熱産生(adaptive thermogenesis)**と呼ばれる現象の一部として説明されています。
つまり、ダイエットが進むにつれて「摂取カロリーが減る」だけでなく、「消費カロリーも減る」可能性があるのです。
「食べていない」のに動いていないこともある
意外と重要なのが日常生活の活動量です。
運動だけがエネルギー消費ではありません。
立つ、歩く、掃除をする、階段を使う、姿勢を維持するなど、日常生活の細かな活動でもエネルギーを消費しています。
これは**NEAT(非運動性活動熱産生)**と呼ばれています。
食事制限が強すぎて疲れてしまうと、
「休日はずっと横になっている」
「以前より歩かなくなった」
「家事をするのも面倒になった」
ということが起こります。
本人としては一生懸命食事を減らしているのですが、同時に消費エネルギーまで低下しているわけです。
そのため、ダイエットでは食事量だけではなく、元気に日常生活を送れているかも重要な指標になります。
筋肉まで減らしてしまわないこと
体重を減らすときに注意したいのが、何が減っているのかです。
体重が3kg減ったとしても、
「脂肪が3kg減った」
とは限りません。
水分やグリコーゲン、筋肉なども体重に含まれます。
特に極端な食事制限を行い、タンパク質やエネルギーが不足した状態が続けば、除脂肪量の減少につながる可能性があります。
筋肉量が減れば基礎代謝にも影響します。
そのため、
体重をできるだけ速く落とすことより、筋肉をなるべく維持しながら脂肪を減らすこと
のほうが重要です。
ウォーキングなどの有酸素運動だけではなく、無理のない範囲で筋力トレーニングを取り入れることも役立ちます。
糖質を減らしすぎて疲れていませんか?
ダイエットを始めると、
「まずご飯を減らしました」
という方が非常に多くいます。
確かに、これまで主食や間食を必要以上に摂っていた場合には、適正量に戻すことは大切です。
しかし、
糖質を減らせば減らすほど痩せる
と考える必要はありません。
糖質は、脳や筋肉などが利用する重要なエネルギー源です。
特に活動量のある方が主食を極端に減らすと、疲労感が強くなり、結果的に日常生活の活動量が低下することがあります。
当院では、お米などの主食をすべて悪者にするのではなく、
「その人の活動量に対して、どのくらい必要なのか」
を考えることが重要だと考えています。
「疲れやすい+痩せにくい」は体からのサイン
ダイエット中に、
- 朝から疲れている
- 食後に強く眠くなる
- 冷えやすくなった
- 集中力が落ちた
- イライラしやすい
- 甘いものが無性に欲しくなる
- 運動する気力がない
- 月経周期が乱れてきた
といった変化が出ている場合には注意が必要です。
単純に「根性が足りない」のではなく、エネルギー不足や睡眠不足、ストレスなどが重なっている可能性があります。
こうした状態でさらに食事を減らすと、体調を崩してしまうことがあります。
ダイエットは体重を落とすことが目的ではなく、健康的な体をつくった結果として余分な体脂肪が減っていくことを目標にしたほうがよいでしょう。
東洋医学では「気虚」と似た状態も
東洋医学では、疲れやすい、食欲が安定しない、胃腸が弱い、体が重いといった状態を「気虚」などの体質として考えることがあります。
気虚とは簡単にいうと、体を動かすエネルギーが不足している状態です。
このようなタイプの方が、
「痩せたいからもっと食事を減らそう」
とすると、さらに疲れやすくなることがあります。
すると、
食事を減らす
↓
疲れる
↓
活動量が減る
↓
さらに食事を減らす
という悪循環に入ってしまいます。
このタイプでは、単純に食事量を減らすよりも、胃腸の状態や睡眠、食事内容を整えながら、きちんと動ける体をつくることが大切だと考えます。
むくみを「脂肪」と思っている場合も
体重が増える原因は体脂肪だけではありません。
体内の水分量によって、体重は日々変化します。
特に、
- 足首がむくむ
- 朝に顔がむくむ
- 夕方になると靴がきつい
- 月経前に体重が増える
- 塩分の多い食事の翌日に体重が増える
といった場合には、水分による体重変動も考える必要があります。
東洋医学では、こうした水分代謝がうまくいっていない状態を「水滞」「水毒」などと表現します。
体重計の数字だけを見て、
「昨日より1kg増えたから脂肪が増えた」
と考える必要はありません。
短期間の体重変化には、水分や消化管内容物なども大きく関係します。
まず「食べる量」より「体の状態」を確認する
ダイエットが停滞したとき、
「さらに食事を減らそう」
と考える前に、一度体の状態を確認してみてください。
睡眠はとれているか。
疲れが残っていないか。
便通はどうか。
食後に眠くならないか。
むくみはないか。
筋肉量は落ちていないか。
日常生活の活動量は減っていないか。
こうしたところに、痩せにくくなっているヒントが隠れていることがあります。
ダイエットは「代謝できる体」をつくること
ダイエットではカロリー収支を無視することはできません。
しかし、だからといって食事を減らし続ければよいわけでもありません。
大切なのは、
必要な栄養を確保しながら、適度に動き、しっかり眠り、余分な体脂肪を少しずつ減らしていくこと。
食べる量を減らしているのに痩せないときほど、
「もっと減らす」
ではなく、
「今の体はちゃんとエネルギーを使える状態なのか?」
という視点を持ってみてください。
ダイエットを「体重を減らす作業」ではなく、代謝・腸内環境・自律神経・睡眠・栄養状態を整えていく体づくりとして考えることが、リバウンドしにくい健康的なダイエットにつながります。
