清涼飲料水やスポーツドリンク、調味料、お菓子などの原材料を見ると、
「果糖ブドウ糖液糖」
と書かれていることがあります。
最近では、
「果糖は肝臓に悪い」
「果糖ブドウ糖液糖は太る」
「インスリン抵抗性の原因になる」
といった話を聞くことも増えました。
では、果糖を含む果物も避けたほうがよいのでしょうか?
当院では、
果物に含まれる果糖と、飲料や加工食品から大量に摂取する果糖ブドウ糖液糖を同じものとして考える必要はない
と考えています。
重要なのは「果糖」という名前だけではありません。
どのような食品から、どのくらいの量を、どのくらいの速度で身体に入れるのか。
ここを考える必要があります。
果糖ブドウ糖液糖とは?
果糖ブドウ糖液糖は、デンプンなどを原料として作られる液状の糖です。
主に、
ブドウ糖(グルコース)
果糖(フルクトース)
から構成されています。
砂糖も、ブドウ糖と果糖からできています。
そのため、
「果糖ブドウ糖液糖だけが特殊な毒物で、砂糖なら安全」
というほど単純ではありません。
実際、摂取エネルギーをそろえて比較した研究では、果糖ブドウ糖液糖だけが砂糖より著しく代謝を悪化させるとは一貫して示されていません。
では、なぜ果糖ブドウ糖液糖を気にする必要があるのでしょうか?
問題は「液体として大量に摂れる」こと
果糖ブドウ糖液糖がよく使われるものの一つが、
甘い飲み物
です。
例えば500mLの甘い飲料なら、かなりの量の糖を短時間で摂取できてしまいます。
ここが果物との大きな違いです。
果物には、
水分
食物繊維
ビタミン
ミネラル
ポリフェノール
などが含まれています。
そして何より、
食品としての構造があります。
噛んで食べる必要があり、胃腸で消化されながら吸収されていきます。
一方、液体として摂取する糖は、噛む必要がありません。
満腹感も得にくいため、短時間に大量の糖を身体へ入れやすくなります。
つまり、
「果糖だから悪い」というより、「精製された糖を液体として大量に摂取できる環境」が問題になりやすい
と考えたほうがよいでしょう。
果糖は肝臓で代謝される
果糖の特徴として重要なのが、
肝臓との関係
です。
ブドウ糖は全身のさまざまな組織で利用されますが、摂取した果糖は小腸や肝臓などで特徴的な代謝を受けます。
適量であれば、果糖を摂ったからといって直ちに脂肪肝になるわけではありません。
問題になりやすいのは、
大量の糖が継続的に入ってくる状態
です。
肝臓には、
グリコーゲンとして蓄える
エネルギーとして利用する
脂肪酸を合成する
中性脂肪として運び出す
など、栄養状態に応じてエネルギーを振り分ける役割があります。
しかし、エネルギーが十分にあるところへさらに大量の糖が入ってくると、肝臓での脂質合成などが増えやすくなります。
これが続けば、
肝脂肪
中性脂肪
インスリン感受性
などに影響する可能性があります。
実際に人間でもインスリン感受性への影響が確認されている
これは動物実験だけの話ではありません。
ヒトを対象とした介入研究でも、果糖を含む甘味飲料を大量に摂取させることで、
肝臓での脂質合成の増加
内臓脂肪の増加
中性脂肪の増加
インスリン感受性の低下
などが確認された研究があります。
さらに若年成人を対象とした研究では、果糖ブドウ糖液糖を含む飲料から摂取するエネルギー量が増えるにつれて、
インスリン感受性が低下する方向の変化
が報告されています。
つまり、
「果糖ブドウ糖液糖と代謝異常には何の関係もない」
とは言えません。
一方で、この結果を、
「果糖ブドウ糖液糖を少しでも摂ったらインスリン抵抗性になる」
と解釈するのも間違いです。
研究で問題になっているのは、特に摂取量が多い場合です。
ここでも、
量と頻度
が重要になります。
果糖ブドウ糖液糖は砂糖より悪いのか?
ここは少し冷静に考える必要があります。
果糖ブドウ糖液糖と砂糖を、同じエネルギー量で比較した研究では、
血糖
インスリン
インスリン抵抗性
などに大きな違いが認められなかった研究もあります。
つまり現在の研究からは、
「果糖ブドウ糖液糖だから砂糖より圧倒的に危険」
とまでは言えません。
むしろ問題なのは、
果糖ブドウ糖液糖
砂糖
ブドウ糖液糖
などを含む食品・飲料によって、
精製された糖を過剰に摂取すること
だと考えたほうがよいでしょう。
ですから、
「果糖ブドウ糖液糖を砂糖に変えれば健康になる」
という話でもありません。
では果物も控えるべき?
ここでよくあるのが、
「果糖が悪いなら果物も食べないほうがいいですよね?」
という考え方です。
しかし、これはおすすめしません。
果物を丸ごと食べることと、果糖を含む甘味飲料を飲むことでは、身体への入り方が違います。
果物には食物繊維があり、食品の構造があります。
さらに、
カリウム
ビタミン
ポリフェノール
なども摂取できます。
疫学研究でも、果物を丸ごと食べることは、むしろ2型糖尿病リスクの低下と関連するものがあります。
ですから、
「果糖=悪い→果物を禁止する」
という栄養指導は、少し乱暴だと思います。
ジュースやスムージーは少し違う
ただし、果物でも、
ジュース
濃縮果汁飲料
などになると話が変わります。
果物そのものを食べる場合よりも短時間に多く摂取しやすくなるからです。
スムージーは食物繊維が残る場合もありますが、丸ごとの果物より噛む量が少なく、摂取速度や量が変わりやすくなります。
当院では、
果物はできるだけ「食べる」
ことをおすすめしています。
「血糖値を上げる=悪」でもない
ここでもう一つ重要なのが、
血糖値が上がること自体を悪者にしない
ことです。
ご飯を食べれば血糖値は上がります。
果物を食べても上がります。
それは身体が糖をエネルギーとして利用するための正常な反応です。
問題なのは、
血糖値が上がったことそのものではなく、
その糖を身体が適切に処理できているか
です。
筋肉に取り込めているのか。
肝臓で適切に処理できているのか。
インスリンが適切に働いているのか。
ここを見る必要があります。
糖質を減らしすぎれば解決するわけでもない
血糖値が上がると、
「糖質をもっと減らしましょう」
となりがちです。
しかし、ここにも注意が必要です。
低糖質食が続くと、身体は脂質を利用する方向へ代謝を適応させます。
その状態で急に多くの糖質を摂ると、一時的に糖の処理能力が低下しているように見えることがあります。
実際、低糖質・高脂質食の後では、糖負荷に対する血糖反応が大きくなることが古くから知られています。
これは、
「糖質を食べたから身体が悪くなった」
とは限りません。
脂肪酸を優先して利用している状態から、再び糖を利用する状態へ切り替える途中の代謝適応が関係している可能性があります。
そのため、
血糖値が上がる→糖質を減らす→さらに糖質処理が低下→糖質を食べるとまた上がる
という循環になってしまうケースには注意が必要だと考えています。
日本人の食生活を考える
日本では昔から、
ご飯
魚
大豆製品
野菜
海藻
いも類
などを組み合わせた食事が続いてきました。
現在は、
「糖質は悪い」
「米を減らしたほうがいい」
という情報も多くあります。
しかし当院では、
精製糖を減らすことと、ご飯などの食品由来の糖質を極端に減らすことは分けて考えるべき
だと考えています。
清涼飲料水やお菓子から大量の糖を摂ることと、
ご飯を中心とした食事を食べることは、
同じ「糖質」でも食事としての意味が違います。
当院が減らしたい「糖質」
当院では糖質そのものを悪者にはしません。
むしろ減らしたいのは、
清涼飲料水
甘いコーヒー飲料
エナジードリンク
お菓子
菓子パン
などから入ってくる、
精製された糖の過剰摂取
です。
一方で、
ご飯
いも
豆
果物
などから摂取する糖質については、身体の状態に合わせながら適切に摂ることをおすすめしています。
まとめ
果糖ブドウ糖液糖は、
「少しでも摂ったら危険な毒」
ではありません。
また、
「安全基準内だからどれだけ摂っても問題ない」
というものでもありません。
特に甘味飲料などから大量に摂取する食生活では、
肝脂肪
中性脂肪
インスリン感受性
などへの影響がヒト研究でも確認されています。
だからこそ、
健康のために積極的に摂る必要はありません。
しかし同時に、
果糖ブドウ糖液糖
砂糖
果物
ご飯
をすべて「糖質」として一括りにするのも適切ではありません。
大切なのは、
糖の種類だけではなく、食品の形・摂取量・摂取速度・食物繊維・栄養素・そして身体の代謝状態まで見ること。
当院では、
精製された糖を減らしながら、食品から必要な糖質はしっかり摂る。
という考え方を大切にしています。
「糖質を避ける」のではなく、
身体が糖質をきちんと利用できる状態をつくる。
これが、本当の意味での体質改善につながるのではないかと考えています。
