最近の臨床で少し気になっているのが、
「なかなか寝付けない」
「夜中に何度も目が覚める」
「寝ているはずなのに、朝から疲れている」
といった、睡眠に関するご相談が増えていることです。
もちろん不眠の原因は一つではありません。
仕事や家庭でのストレス、生活リズム、ホルモンバランスなど、さまざまな要因が関係します。
ただ最近の患者さんを診ていると、季節の変わり目による自律神経への負担と、胃腸の状態が重なっている方が多いように感じています。
朝晩の気温差は、身体にとって意外と大きな負担
秋になり、日中はまだ暑いのに、朝晩はかなり涼しくなってきました。
こうした時期、身体は外気温に合わせて体温を一定に保とうとしています。
暑ければ熱を逃がし、寒くなれば熱を逃がさないようにする。
この調節にも自律神経が関わっています。
そのため、一日の中で気温が大きく変化する季節は、それだけ身体の調節機能にも負担がかかります。
昼間はなんともなかったのに、
「夜になっても身体の力が抜けない」
「布団に入っても頭が冴えている」
という方もいらっしゃいます。
睡眠は、単純に疲れれば眠れるというものではありません。
活動する状態から、休む状態へ身体を切り替えられることがとても大切です。
最近は「お腹の状態」も一緒に確認しています
睡眠の相談だからといって、頭や自律神経だけを診ているわけではありません。
私が最近特に確認しているのが、胃腸の状態です。
夏の間に冷たいものをたくさん摂っていた。
暑さで食欲が落ちていた。
逆に涼しくなって食欲が増し、食べる量が急に増えた。
こうした変化があると、胃腸にも負担がかかります。
胃腸がうまく働かなければ、食べていても必要な栄養を十分に消化・吸収できないことがあります。
すると、
「食べているのに、身体では足りていない」
ということも起こり得ます。
栄養は「不足」だけを考えればいいわけではありません
栄養というと、
「不足しているものを補いましょう」
という話になりがちです。
もちろん不足している場合には、必要なものを補うことも大切です。
しかし私は、不足だけでなく「摂り過ぎ」も確認する必要があると考えています。
例えば、夜遅くにたくさん食べる。
脂っこいものを食べ過ぎる。
お酒を飲んでそのまま寝る。
寝る直前まで間食をする。
こうした状態では、寝る時間になっても胃腸は消化のために働き続けることになります。
身体は休みたいのに、お腹はまだ仕事をしている。
これでは、睡眠の質が低下しても不思議ではありません。
実際、就寝前の大量の食事やアルコールなどは睡眠を妨げる要因になります。
「足りない」と「多過ぎる」の両方を見る
だからこそ、睡眠の相談では、
「何を摂れば眠れるのか?」
だけを考えないようにしています。
必要な栄養が足りているのか。
きちんと消化・吸収できているのか。
食べる量が多過ぎないか。
夕食の時間が遅くなっていないか。
胃腸が疲れていないか。
こうしたことを一つずつ確認していきます。
大切なのは、たくさん栄養を入れることではありません。
その人の身体が必要としている量を、きちんと消化・吸収し、利用できる状態にすること。
これは当院の栄養サポートで大切にしている考え方の一つです。
鍼灸でも「眠れない場所」だけを探さない
鍼灸治療でも考え方は同じです。
眠れないから頭だけに鍼をする、というわけではありません。
首や肩の過緊張。
背中の張り。
お腹の硬さ。
呼吸の浅さ。
手足の冷え。
こうした身体全体の状態を確認します。
最近の患者さんを診ていると、前回お話しした「めまい」の方と同じように、身体がうまく緊張を解除できていない方が目立ちます。
日中に頑張ることはできても、夜になっても身体が休息へ切り替わらない。
そこへ胃腸の負担や栄養状態の偏りが重なることで、睡眠に影響している方もいるのではないかと感じています。
最近感じること
「眠れない」という症状だけを追いかけていると、
「どうしたら眠れるのか?」
ばかりを考えてしまいます。
でも身体全体を診てみると、
季節の変化に身体がついていけていない。
胃腸が疲れている。
食事量が合っていない。
身体の緊張が抜けない。
そんな背景が見えてくることがあります。
睡眠は、一日の最後に起こる身体の働きです。
だからこそ、夜だけを変えようとするのではなく、朝から夜まで身体がどのように過ごしているのかを見ることが大切なのだと思います。
最近眠りにくくなった方は、「睡眠」だけではなく、食事や胃腸の調子、疲れ方、身体の緊張にも少し目を向けてみてください。
身体が休める条件を一つずつ整えていくことが、良い睡眠への第一歩になるかもしれません。
