「添加物をたくさん摂ってしまったのでデトックスしたい」
「身体に溜まった毒素を排出したい」
健康について調べていると、「デトックス」という言葉をよく見かけます。
デトックスジュース、ファスティング、サプリメント、デトックスウォーターなど、さまざまな方法が紹介されています。
では実際に、
食品添加物は身体の中に溜まり、何かを飲んだり食べたりすることで排出できるのでしょうか?
この話を理解するためには、まず私たちの身体が普段どのように異物や代謝物を処理しているのかを知る必要があります。
実は私たちの身体には、
肝臓
腎臓
胆汁
腸管
などを使って、不要な物質を処理し排泄する仕組みがもともと備わっています。
今回は「添加物を出す」という発想から少し離れて、身体がどのように物質を処理しているのかを考えてみたいと思います。
「デトックス」とは何を意味するの?
「デトックス」という言葉は非常に幅広く使われています。
一般的には、
身体の中にある有害物質や不要な物質を排出する
という意味で使われることが多いと思います。
しかし医学や生理学では、身体の中に入った物質は、
吸収
分布
代謝
排泄
というさまざまな過程をたどります。
つまり、
「毒が身体に溜まって、それを洗い流す」
という単純な仕組みではありません。
物質によって、
そのまま尿へ排泄されるもの
肝臓などで代謝されるもの
胆汁を通して排泄されるもの
など処理方法が違います。
食品添加物についても同じです。
すべての添加物が身体に蓄積するわけでもなければ、すべて同じ方法で排泄されるわけでもありません。
身体の「化学工場」である肝臓
身体に入ったさまざまな物質の代謝で重要な役割を担っているのが、
肝臓
です。
腸から吸収された多くの栄養素や物質は、門脈という血管を通って肝臓へ運ばれます。
肝臓では、
糖質の代謝
脂質の代謝
タンパク質の代謝
薬物などの代謝
胆汁の生成
など、非常に多くの仕事が行われています。
そのため肝臓は、
身体の化学工場
と表現されることもあります。
私たちが普段意識していなくても、肝臓は毎日さまざまな物質を処理しています。
肝臓の「第Ⅰ相・第Ⅱ相」とは?
肝臓での異物代謝について調べると、
第Ⅰ相(Phase I)
第Ⅱ相(Phase II)
という言葉が出てきます。
第Ⅰ相では、代表的にはシトクロムP450と呼ばれる酵素群などが関わり、
酸化
還元
加水分解
などによって物質の構造を変化させます。
続く第Ⅱ相では、
グルクロン酸抱合
硫酸抱合
グルタチオン抱合
アセチル化
メチル化
などによって物質をさらに変化させ、排泄しやすい形にしていきます。
ただし、
すべての物質が必ず「第Ⅰ相→第Ⅱ相」という順番を通るわけではありません。
第Ⅱ相へ直接進むものもありますし、物質によって代謝経路は異なります。
「肝臓のデトックスは必ず2段階」
という理解ではなく、
身体にはさまざまな酵素を使って物質を処理する仕組みがある
と考えてください。
「解毒」という言葉にも注意
ここで一つ注意があります。
第Ⅰ相・第Ⅱ相反応は、
「毒を無毒にする反応」
と説明されることがあります。
確かに最終的に排泄しやすくなる物質もあります。
しかし、代謝の途中で元の物質より反応性の高い中間代謝物が作られることもあります。
そのため、
第Ⅰ相=毒を消す
第Ⅱ相=さらに毒を消す
という単純な仕組みではありません。
身体は非常に複雑な化学反応を組み合わせながら、さまざまな物質を処理しています。
グルタチオンは何をしている?
肝臓の代謝でよく登場するのが、
グルタチオン
です。
グルタチオンは、
グルタミン酸
システイン
グリシン
という3つのアミノ酸から作られています。
抗酸化システムに関わるほか、第Ⅱ相反応の一つであるグルタチオン抱合にも関与します。
そのため、
「デトックスにはグルタチオン」
という情報を見かけることがあります。
しかし、
グルタチオンを摂れば、食べた添加物をすべて排出できる
という意味ではありません。
重要なのは、身体がこうした代謝システムを日常的に働かせているということです。
そして、その仕組みを維持するためにも、普段の栄養状態が重要になります。
胆汁は脂肪を消化するだけではない
当院では腸内環境や栄養を考えるとき、
胆汁
も重要視しています。
胆汁というと、
「脂肪を消化するもの」
というイメージが強いかもしれません。
正確には、胆汁酸によって脂質を乳化し、脂質の消化・吸収を助けています。
そして胆汁にはもう一つ重要な役割があります。
それが、
身体から物質を排泄する経路の一つ
ということです。
肝臓で処理された物質の一部は胆汁中へ排泄され、
肝臓
↓
胆汁
↓
腸管
という経路を通ります。
つまり胆汁は、消化だけではなく身体の排泄システムにも関わっています。
胆汁として出たら終わりではない
ここが面白いところです。
胆汁として腸管へ排泄された物質が、必ずそのまま便として出ていくとは限りません。
一部の物質は腸内で変化したあと、
再び吸収されて身体へ戻る
ことがあります。
これを、
腸肝循環
といいます。
胆汁酸自体も大部分が腸管から再吸収され、肝臓へ戻って再利用されています。
また、一部の抱合された物質については腸内細菌が関わり、再吸収されることがあります。
つまり、
肝臓だけで身体の処理を考えることはできない
のです。
肝臓と胆汁、そして腸管はつながっています。
腸内環境と「排泄」
ここで腸内環境の話につながります。
腸は、
「栄養を吸収する場所」
であると同時に、
便として不要なものを身体の外へ出す場所
でもあります。
そのため、
便通
食物繊維
腸内細菌
なども、身体の排泄を考えるうえで無視できません。
食物繊維は便量や便通にも関係します。
また、一部の胆汁酸や物質の腸管内での動きにも影響します。
だからこそ「デトックス」を考えるなら、
特殊なジュースを飲む前に、
普段きちんと食べ、きちんと排便できているか
を見ることも大切です。
腎臓も重要な排泄臓器
もう一つ忘れてはいけないのが、
腎臓
です。
腎臓では血液がろ過され、身体に必要なものを再吸収しながら、不要な物質を尿として排泄しています。
特に水に溶けやすい物質や、その代謝物の排泄に重要な役割を担います。
つまり身体には、
肝臓で代謝する
胆汁から腸へ出す
腎臓から尿へ出す
腸から便として出す
といった複数の経路があります。
これらが普段から働いているのです。
汗をかけばデトックスできる?
「汗をたくさんかけば毒素が出る」
という話もよく聞きます。
確かに汗にはさまざまな物質が含まれます。
しかし、身体の老廃物や異物を排泄する中心的な経路は、
肝臓・腎臓・胆汁・腸管
です。
サウナや運動で汗をかくこと自体には別のメリットがありますが、
大量に汗をかけば添加物を排出できる
と考える必要はありません。
ファスティングをすれば肝臓が休める?
「デトックスのために断食をする」
という方法もあります。
短期間食事を減らすことで身体の代謝状態が変化することはあります。
しかし、
食べないことで肝臓の解毒機能がリセットされる
という単純な仕組みではありません。
むしろ肝臓で行われるさまざまな酵素反応には、身体の栄養状態も関係します。
極端な食事制限を長期間行えば、
タンパク質
ビタミン
ミネラル
エネルギー
などが不足する可能性があります。
特に、もともと食事量が少ない方や体力が低下している方が、
「身体をきれいにするため」
とさらに食事を減らすことには注意が必要です。
本当の意味で「肝臓を支える食事」とは?
では、身体の代謝や排泄を支えるためには何を食べればよいのでしょうか。
特別な「デトックス食品」が必要なわけではありません。
まずは、
十分なエネルギーを摂ること。
そして、
タンパク質
ビタミン
ミネラル
食物繊維
などを不足させないことです。
例えば、
ご飯
魚
肉
卵
大豆製品
野菜
海藻
きのこ
など、さまざまな食品を組み合わせます。
肝臓は非常に多くの化学反応を行う臓器です。
その働きを考えるのであれば、
「何か一つを飲んで解毒する」という発想より、身体が代謝を行うための材料を不足させない
という考え方のほうが大切です。
「ミネラルを摂ればデトックス」でもない
ミネラルについても、
「ミネラルを摂れば毒素が排出される」
といった表現を見かけることがあります。
ミネラルは身体のさまざまな酵素反応や生理機能に必要です。
不足しているのであれば、適切に補うことは重要です。
しかし、
ミネラルそのものが添加物を吸着して身体から洗い流す
というような理解は適切ではありません。
ミネラルは「デトックス剤」ではなく、
身体が正常に機能するために必要な栄養素
として考えてみてください。
「入れない」より「処理できる身体」?
ここまで読むと、
「では、身体の処理能力を高めれば添加物はいくら摂ってもいいの?」
と思うかもしれません。
もちろん、そういうことでもありません。
身体に処理する仕組みがあるからといって、何でも無制限に摂取してよいわけではありません。
一方で、
「添加物が少し入った食品を食べてしまった。早くデトックスしなければ」
と怖がる必要もありません。
大切なのは、
身体にはもともと代謝・排泄する仕組みがあることを知ること。
そのうえで加工度の高い食品ばかりに偏らない食生活を作っていく。
この両方の視点を持つことです。
「デトックス」より先に確認してほしいこと
身体を整えたいと思ったら、特別なデトックスを始める前に、
きちんと食べていますか?
タンパク質は足りていますか?
ご飯などから必要なエネルギーを摂っていますか?
野菜、海藻、きのこ、豆類などを食べていますか?
水分を適切に摂っていますか?
排便できていますか?
睡眠は取れていますか?
まずはここを確認してみてください。
身体には、
代謝する仕組みと、外へ出す仕組み
が最初から備わっています。
その働きを邪魔しない生活を作ることが基本です。
まとめ
「添加物をデトックスする」というと、
身体に溜まった添加物を何か特別な方法で洗い流すようなイメージを持つかもしれません。
しかし実際の身体はもっと複雑です。
身体に入った物質は、その性質に応じて、
肝臓で代謝される
腎臓から尿へ排泄される
胆汁を介して腸管へ排泄される
便として身体の外へ出る
など、さまざまな経路をたどります。
そして、その働きには肝臓だけではなく、
胆汁・腸内環境・腎臓・栄養状態
などが関係しています。
だからこそ、
「昨日添加物を食べたから今日はデトックスジュース」
ではなく、
普段から身体が正常に代謝・排泄できる状態を支える。
十分に食べる。
タンパク質を摂る。
ビタミンやミネラルを不足させない。
食物繊維を摂る。
適切に水分を摂る。
そして便として排泄する。
こうした基本的な身体の働きを大切にしてください。
デトックスとは、
特別なものを身体に入れることではなく、もともと身体に備わっている代謝と排泄の仕組みを理解すること。
その視点を持つと、食品添加物についても必要以上に怖がらずに付き合えるようになると思います。
次回は、
「ハム・ベーコン・ソーセージは身体に悪い?亜硝酸塩と加工肉について考える」
を取り上げます。
