妊活を始めると、それまで以上に食事が気になる方は多いと思います。
「添加物は卵子の質を悪くする?」
「コンビニの食品は食べないほうがいい?」
「無添加の食品に変えたほうがいい?」
「人工甘味料は妊活中には避けるべき?」
特に不妊治療をしていると、
少しでも妊娠につながることをしたい
という気持ちから、食事について調べる機会も増えていきます。
すると、
添加物を避ける。
小麦を避ける。
砂糖を避ける。
乳製品を避ける。
加工食品を避ける。
と、「食べてはいけないもの」がどんどん増えてしまうことがあります。
しかし妊活の栄養を考えるうえで、本当にそれが最優先なのでしょうか?
今回は、食品添加物と妊活について考えてみたいと思います。
「添加物を摂ると卵子の質が落ちる」とはいえない
最初に大切なところです。
現在の科学的知見から、
通常の食生活で認められた食品添加物を摂取することによって、直接的に卵子の質が低下する
と一括りに結論づけることはできません。
日本で使用される食品添加物については、安全性評価が行われ、必要に応じて使用基準などが設定されています。
もちろん、食品添加物と生殖機能について研究されている物質もあります。
しかし、
動物実験なのか。
人を対象とした研究なのか。
どのくらいの量を摂取したのか。
通常の食生活で摂る量なのか。
によって意味は大きく変わります。
「この添加物を摂ったら卵子が老化する」
といった単純な話ではありません。
妊活では「添加物」より食生活全体を見る
では、妊活中は食事を気にしなくてよいのでしょうか?
もちろん、そういうことではありません。
妊活では食事はとても大切です。
ただし見るところが、
「添加物を摂ったかどうか」だけではない
ということです。
例えば、
朝:菓子パンとコーヒー
昼:カップ麺
間食:お菓子
夜:冷凍食品
という食生活だったとします。
この場合、
「添加物をたくさん摂っているから妊活に悪い」
だけで説明するのは適切ではありません。
それよりも、
タンパク質は足りているか。
食物繊維は摂れているか。
鉄や亜鉛などのミネラルは足りているか。
葉酸などのビタミンは摂れているか。
エネルギーそのものが不足していないか。
といったことも考える必要があります。
卵子を作るにも「材料」が必要
妊活では、
「身体に悪いものを入れない」
ことに意識が向きやすいのですが、
同じくらい大切なのが、
身体に必要な材料を入れること
です。
私たちの身体は、食べたものから作られています。
卵胞が発育していく過程でも、さまざまな代謝が行われています。
そのため、
タンパク質
脂質
糖質
ビタミン
ミネラル
などを適切に摂ることが基本になります。
添加物を完全に避けることができても、食事量そのものが少なくなってしまえば、身体に必要な栄養まで不足してしまう可能性があります。
妊活でまず確認したい栄養
妊活では、特定の「妊娠しやすくなる食品」を探すよりも、まず基本的な栄養状態を確認することが大切です。
例えば、
葉酸
妊娠前からの摂取が重要な栄養素としてよく知られています。
鉄
月経のある女性では不足しやすい栄養素の一つです。
亜鉛
さまざまな酵素反応や細胞機能に関係する重要なミネラルです。
ビタミンD
骨代謝だけではなく、生殖との関連についても研究されています。
コリン
細胞膜や神経系の発達などに関わり、妊娠期にも重要な栄養素です。
そして、
タンパク質や十分なエネルギー摂取
も忘れてはいけません。
「添加物を避けています」という方でも、実際の食事を確認すると、
そもそも食べる量が少ない
ということがあります。
妊活では「引き算」だけではなく、「足し算」の栄養を考えることが大切です。
糖質を怖がりすぎない
妊活中に、
「糖質は炎症を起こすから控えています」
という方もいます。
確かに、砂糖を多く含む飲料やお菓子を大量に摂る生活を見直すことは大切です。
また、PCOSなどではインスリン抵抗性が関係する場合もあります。
しかし、
糖質そのものが悪いわけではありません。
糖質は身体にとって重要なエネルギー源です。
ご飯まで極端に減らしてしまい、
疲れやすい。
空腹感が強い。
間食が増える。
食事全体のエネルギーが不足する。
という状態になってしまうこともあります。
妊活では、
砂糖をたくさん摂ることと、ご飯を食べることを同じ「糖質」として考えない
ことも大切です。
脂質も卵子の敵ではない
脂質についても同じです。
「油は身体に悪い」
と考えて極端に脂質を減らしてしまう方がいます。
しかし脂質は、
細胞膜
ステロイドホルモン
脂溶性ビタミンの吸収
などにも関わります。
もちろん、どのような脂質をどのくらい摂るかは大切です。
しかし、
脂質をゼロに近づければ妊娠しやすくなるわけではありません。
妊活の食事では、何か一つの栄養素を極端に排除するより、全体のバランスを見る必要があります。
超加工食品と妊活はどう考える?
では、加工度の高い食品はどうでしょうか。
近年、超加工食品の摂取量とさまざまな健康指標との関連が研究されています。
生殖機能についても研究は進められていますが、
「超加工食品に含まれる添加物が不妊の原因である」
と単純に結論づけることはできません。
超加工食品の摂取が多い食生活では、
食物繊維が少ない
食品の種類が少ない
糖類や脂質を多く摂りやすい
エネルギー密度が高くなりやすい
など、さまざまな要素が同時に変化します。
そのため、
添加物だけを取り出して原因と考えない
ことが重要です。
腸内環境も妊活の土台の一つ
これまでの添加物シリーズでは、腸内環境についてもお話ししてきました。
一部の乳化剤や人工甘味料について、腸内細菌叢との関係を調べる研究があります。
ただし、
「乳化剤を避ければ妊娠率が上がる」
という話ではありません。
腸内環境を考えるのであれば、それ以上に、
野菜
海藻
きのこ
豆類
いも類
果物
など、腸内細菌が利用できる食品を食べているかを見ることも大切です。
妊活でも、
「腸に悪いものを探す」より「腸に必要なものを届ける」
という考え方を持ってみてください。
男性側の食生活も忘れない
妊活の栄養というと、どうしても女性側の食事ばかりが注目されます。
しかし妊娠には当然、
精子の状態
も関係します。
精子についても、
喫煙
過度な飲酒
肥満
運動
睡眠
食生活
など、さまざまな生活習慣との関連が研究されています。
そのため、
「女性だけが添加物を避ける」
という妊活ではなく、
夫婦で食生活全体を整えていく
という考え方も大切です。
妊活中こそ「食べることが怖い」状態に注意
妊活が長くなるほど、
「これを食べたから着床しなかったのでは?」
「昨日コンビニで食べたから卵子に悪かったのでは?」
と、一つ一つの食事が気になってしまうことがあります。
しかし、妊娠は一回の食事だけで決まるものではありません。
身体の状態には、
年齢
卵巣機能
精子
子宮
ホルモン
代謝
生活習慣
など、多くの要因が関係しています。
一つのお菓子や一回の外食に罪悪感を持つ必要はありません。
食事は、
長い期間の積み重ね
として考えてください。
妊活の食事は「引き算」より「土台作り」
当院で妊活の食事を考えるときも、
「これは食べないでください」
ということばかりを増やしたいわけではありません。
まず確認したいのは、
きちんと食べているか。
エネルギーは足りているか。
タンパク質は足りているか。
ミネラルは足りているか。
腸内環境はどうか。
という身体の土台です。
そのうえで、加工食品やお菓子などが多ければ少しずつ減らしていく。
この順番が大切だと考えています。
和食をベースにすると考えやすい
妊活だからといって、特別な食事を用意する必要はありません。
例えば、
ご飯
味噌汁
魚または肉
卵
豆腐や納豆
野菜
海藻
きのこ
といった食事を基本にします。
そこに季節の果物などを組み合わせてもよいでしょう。
こうすると、
タンパク質
糖質
脂質
ビタミン
ミネラル
食物繊維
を自然に組み合わせやすくなります。
そして結果的に、
加工度の高い食品だけに偏ることも減っていきます。
「添加物を避けるための食事」を作るのではなく、
「身体に必要なものを食べる食事」を作る。
結果として添加物を摂る頻度も減っていく。
この順番で考えてみてください。
妊活中の食事で優先したい順番
添加物が気になったときには、まず次の順番で食生活を確認してみてください。
① 食事量は足りているか
極端なダイエットや食事制限になっていないか確認します。
② タンパク質とエネルギーを摂れているか
身体を作り、代謝を行うための基本です。
③ ビタミン・ミネラルを摂れているか
葉酸、鉄、亜鉛などを含め、食事全体を確認します。
④ 腸内細菌に必要な食品を食べているか
野菜、海藻、きのこ、豆類など、食品の種類を増やします。
⑤ 加工食品やお菓子に偏っていないか
多ければ少しずつ素材に近い食品へ置き換えます。
⑥ そのうえで添加物を考える
気になるものがあれば、原材料表示を確認して選択します。
この順番にすると、
「添加物は避けているけれど栄養不足」
という状態を防ぎやすくなります。
まとめ
妊活中は、食事について敏感になる時期だと思います。
だからこそ、
「添加物を食べたら卵子に悪い」
といった情報に振り回されないことも大切です。
通常の食生活における食品添加物の摂取と卵子・精子の質については、単純な因果関係で説明できるものではありません。
それよりもまず、
十分なエネルギーを摂る。
タンパク質を摂る。
葉酸など必要な栄養素を確保する。
ミネラルを不足させない。
腸内細菌に必要な食品を食べる。
食事の種類を増やす。
という土台を整えていきます。
そのうえで、
加工食品ばかりになっていれば少し減らす。
無理のない範囲で素材に近い食品を増やす。
添加物はその中で考えていけばよいでしょう。
妊活の食事で大切なのは、
「悪いものを身体から遠ざけること」だけではありません。
それ以上に、
「卵子や精子、そして身体が必要としている材料をきちんと届けること」。
食事を「禁止事項」にするのではなく、これから身体を作っていくための土台として考えてみてください。
次回は、
「添加物はデトックスできる?肝臓・腎臓・胆汁・腸から考える身体の解毒」
について詳しく解説していきます。
