インスリン抵抗性は血液検査でわかる?血糖値が正常でも分からないこと

前回の記事では、

インスリン抵抗性とは、インスリンが分泌されても身体がその作用に反応しにくくなっている状態

と説明しました。

では、

「健康診断の血液検査を見れば、インスリン抵抗性があるか分かるのでしょうか?」

これは患者さんからもよく聞かれる質問です。

結論からいうと、

通常の健康診断だけでは、インスリン抵抗性の初期段階は分かりにくいことがあります。

なぜなら、

血糖値が正常でも、その血糖値を維持するために身体がたくさんのインスリンを必要としていることがあるからです。

今回は、この仕組みをできるだけ分かりやすく説明します。

目次

まず「血糖値」と「インスリン」は違います

健康診断では、

空腹時血糖

を測ることがあります。

これは文字通り、

血液中にどのくらいブドウ糖があるのか

を調べる検査です。

一方、インスリンは膵臓から分泌されるホルモンです。

食事をして血糖値が上がるとインスリンが分泌され、筋肉などが糖を取り込んだり、肝臓から糖が出すぎないように調節したりします。

つまり、

血糖値=血液中にある糖の量

インスリン=その糖を調節するために働くホルモン

です。

ここを分けて考えると、インスリン抵抗性が分かりやすくなります。

同じ血糖値でも、身体の中は同じとは限らない

例えば、

AさんとBさんの空腹時血糖が、どちらも90mg/dLだったとします。

健康診断の結果だけを見ると、

「二人とも90だから同じですね」

と思います。

しかし、身体の中では違うことが起きている可能性があります。

Aさん

インスリンがしっかり効いている。

少ないインスリンでも血糖値を90に維持できている。

Bさん

インスリンが効きにくくなっている。

そのため膵臓がインスリンをたくさん分泌して、なんとか血糖値を90に維持している。

結果として、

二人とも血糖値は90mg/dLです。

血糖値だけを見れば同じでも、

その90mg/dLを維持するために身体がどのくらい頑張っているのかは違う可能性がある

ということです。

これが、血糖値だけではインスリン抵抗性が分かりにくい理由の一つです。

インスリン抵抗性があっても、最初は血糖値が上がらないことがある

インスリンが効きにくくなったからといって、すぐに血糖値が高くなるとは限りません。

身体には血糖値を一定範囲に保とうとする仕組みがあります。

インスリンが効きにくくなる

膵臓がインスリンを多く分泌する

血糖値を正常範囲に戻す

ということができるからです。

そのため初期には、

「血糖値は正常だけれど、インスリンをたくさん必要としている」

という状態が起こり得ます。

ここが重要です。

健康診断で、

「血糖値は正常でした」

ということと、

「インスリンが少ない量でもしっかり効いています」

ということは、まったく同じ意味ではありません。

HbA1cが正常なら大丈夫?

健康診断では、

HbA1c(ヘモグロビンA1c)

を見ることもあります。

HbA1cは、その瞬間の血糖値ではなく、最近の血糖状態をある程度まとめて見るための指標です。

糖尿病の診断や経過観察にも使われる、とても重要な検査です。

しかしHbA1cも、

インスリンがどのくらい分泌されているのかを直接測っている検査ではありません。

そのため、

空腹時血糖が正常
HbA1cも正常

だからといって、

「インスリン抵抗性が絶対にない」

とまでは言えません。

ではインスリンそのものを測ればいい?

必要に応じて医療機関では、

血液中のインスリン

を測定することがあります。

空腹時の血糖値とインスリン値を組み合わせることで、インスリン抵抗性を推定する方法もあります。

また、

経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)

といって、一定量のブドウ糖を飲み、その後の血糖値などの変化を調べる検査が行われることもあります。

ただし、

一つの数値だけでインスリン抵抗性のすべてが分かるわけではありません。

必要な検査については、医療機関でその人の状態に合わせて判断することが大切です。

健康診断は意味がないの?

もちろん、そんなことはありません。

空腹時血糖やHbA1cは、糖代謝の状態を知るために非常に大切な検査です。

ここで伝えたいのは、

「正常値だから意味がない」のではなく、「一つの数字だけでは身体のすべては分からない」

ということです。

血液検査は身体の状態を知るための大切な材料です。

ただし、身体そのものではありません。

血液検査と一緒に生活を見る

例えば、

空腹時血糖が正常だったとしても、

毎日甘い飲み物を飲んでいる
運動する習慣がほとんどない
内臓脂肪が増えてきた
睡眠時間が短い
慢性的なストレスが続いている

という場合には、

「血糖値が正常だったから何も気にしなくていい」

と考えるより、

今のうちから生活を整えておこう

と考えるほうがよいでしょう。

反対に、

食後に眠くなるからインスリン抵抗性だ

甘いものが欲しくなるからインスリン抵抗性だ

と、症状だけから決めつけることもできません。

症状はあくまで、

身体の状態を考えるための一つの情報

です。

一回の数字より「変化」を見ることも大切

血液検査では、

一回の数字だけではなく、

以前と比べてどう変化しているのか

を見ることも大切です。

例えば、

以前より血糖値が上がってきた。

HbA1cが少しずつ上がっている。

体重や腹囲が増えてきた。

食生活が変わった。

運動量が減った。

こうした変化を一緒に見ていくことで、身体の状態を考えやすくなります。

血液検査は、

身体に点数をつけるものではなく、身体の変化に気づくための材料

として使うとよいと思います。

「正常か異常か」だけではなく、その背景を見る

当院では血液検査を見るとき、

「基準値の中だから大丈夫」

「基準値から外れたから悪い」

という二つだけで考えないようにしています。

なぜこの数字になっているのか。

普段どのような食事をしているのか。

しっかり食べられているのか。

睡眠は取れているのか。

身体を動かしているのか。

ストレスはどうなのか。

そして、

以前と比べてどう変化しているのか。

こうした背景と血液検査を組み合わせて考えることが大切です。

まとめ

インスリン抵抗性は、

通常の健康診断だけでは分かりにくいことがあります。

特に初期には、

インスリンが効きにくくなる

膵臓がインスリンを多く分泌する

血糖値を正常に保つ

ということがあるためです。

つまり、

血糖値が正常=インスリンの働きも必ず正常

とは限りません。

ただし、だからといって、

「健康診断では何も分からない」

ということでもありません。

空腹時血糖やHbA1cはとても大切な検査です。

必要があれば医療機関で、インスリンの測定や糖負荷試験などを行うこともあります。

そして大切なのは、

一つの数字だけで身体を判断しないこと。

血液検査に加えて、

食事
運動
睡眠
体重や腹囲の変化
ストレス
日頃の体調

なども一緒に見ていく。

血液検査は「答え」ではなく、

今の身体で何が起きているのかを考えるための大切な材料の一つ。

そのように考えていただくと、健康診断の結果も今までとは少し違って見えてくると思います。

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