臨床こぼれ話|何気ない会話の中に、治療のヒントがあります

何気ない会話の中に、治療のヒントがあります

鍼灸院では、症状だけで治療方針を決めることはほとんどありません。

もちろん、痛みや不調がどこにあるのかは大切です。

しかし、それと同じくらい大切にしているのが、患者さんとの何気ない会話です。

「最近、仕事が忙しくて。」

「そういえば、食後はいつも眠くなるんです。」

「夜中に目が覚めることが増えました。」

「甘いものがやめられなくて……。」

こうした一見すると症状とは関係のない話が、治療の方向性を決める大きなヒントになることが少なくありません。

例えば、肩こりを主訴に来院された方でも、その背景には睡眠不足や胃腸の不調、ストレス、自律神経の乱れが隠れていることがあります。

また、妊活で通われている方でも、「最近仕事で大きな環境の変化がありました」という一言から、副腎への負担や自律神経の影響を考えることもあります。

東洋医学では、一つひとつの症状を切り離して考えるのではなく、身体全体のつながりを大切にします。

そのため、最初は肩こりの治療を考えていても、お話を伺う中で「まずは胃腸を整えた方がいい」「自律神経へのアプローチを優先しよう」と、治療方針が変わることもあります。

これは診断がぶれているのではありません。

患者さんのお話という新しい情報が加わることで、身体全体の状態がよりはっきり見えてくるからです。

私はよく、「木を見て森を見ず」という言葉を思い浮かべます。

症状という一本の木だけを見ていると、本当の原因を見落としてしまうことがあります。

反対に、森全体だけを見ていても、一本一本の木の変化には気づけません。

大切なのは、木も森も両方を見ること。

西洋医学のように一つの症状や検査結果を丁寧に見る視点と、東洋医学のように身体全体の流れやつながりを見る視点、その両方があって初めて、本当にその方に合った治療が見えてくると考えています。

だからこそ、私は診察中の何気ない会話をとても大切にしています。

患者さん自身は「こんなことは関係ないかな」と思って話された一言が、治療の方向性を決める大切なヒントになることは珍しくありません。

何気ない会話の積み重ねが、その方の身体を理解するための大切な地図になっているのです。

このシリーズは今後も「臨床こぼれ話」として続けると、光司さんの診療に対する考え方や人柄が伝わり、専門的な内容とはまた違った魅力のあるブログになると思います。

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