インスリン抵抗性とは?血糖値が正常でも知っておきたい身体からのサイン

健康診断で、

「血糖値は正常でした」

と言われると、糖代謝には問題がないと思う方が多いかもしれません。

しかし、血糖値が正常範囲でも、その血糖値を維持するために身体が頑張っていることがあります。

そこで知っておきたいのが、

「インスリン抵抗性」

です。

名前だけ聞くと難しそうですが、仕組みはそれほど難しくありません。

今回は、インスリン抵抗性とはどのような状態なのかを、できるだけ分かりやすく説明します。

目次

そもそもインスリンとは?

ご飯などの糖質を食べると、消化されてブドウ糖となり、血液中に入ってきます。

すると血糖値が上がります。

そこで膵臓から分泌されるのが、

インスリン

です。

インスリンには、血液中のブドウ糖を筋肉などの細胞へ取り込ませたり、肝臓での糖の出入りを調節したりする重要な働きがあります。

イメージとしては、

血液中の糖を身体の細胞へ届けるための合図

のようなものです。

インスリンが適切に働くことで、私たちは食事から摂った糖をエネルギーとして利用できます。

インスリン抵抗性とは?

ところが、インスリンが分泌されても、筋肉や肝臓、脂肪組織などがその作用に反応しにくくなることがあります。

これを、

インスリン抵抗性

といいます。

例えば通常なら、

インスリン「糖が来ましたよ。取り込んでください」

筋肉「分かりました」

とスムーズに進むところが、

インスリン抵抗性があると、

インスリン「糖が来ましたよ」

筋肉「……」

インスリン「もっとインスリンを出します!」

という状態になります。

つまり身体は、

同じ血糖値を処理するために、以前より多くのインスリンを必要とする

ようになります。

これがインスリン抵抗性を理解するうえで大切なポイントです。

血糖値が正常でも起こることがある

ここが非常に重要です。

インスリン抵抗性が始まったからといって、すぐに血糖値が高くなるとは限りません。

膵臓がまだ十分にインスリンを分泌できれば、

インスリンが効きにくい
↓
膵臓がたくさんインスリンを出す
↓
血糖値を正常範囲に戻す

ことができます。

つまり、

血糖値は正常だけれど、その裏でインスリンをたくさん分泌している

という状態があり得ます。

健康診断で空腹時血糖やHbA1cだけを見ていると、この段階では気づきにくいことがあります。

インスリンが効きにくくなるとどうなる?

インスリン抵抗性が続くと、身体は血糖値を維持するために、より多くのインスリンを必要とします。

その状態が長く続き、膵臓が十分に対応できなくなってくると、

食後血糖が高くなる
↓
空腹時血糖も高くなる
↓
HbA1cが上昇する

といった変化につながることがあります。

つまり糖尿病になる前から、

糖を処理するために身体へ負担がかかっている期間

が存在する可能性があります。

だからこそ、病気になってからではなく、その前の生活習慣を整えることが大切です。

インスリン抵抗性は太っている人だけ?

「インスリン抵抗性=肥満」

と思われがちですが、必ずしもそうではありません。

確かに肥満、特に内臓脂肪の増加はインスリン抵抗性と強く関係します。

しかし日本人を含む東アジア人では、欧米人と比べて、それほどBMIが高くない段階から糖代謝異常を起こす人がいることが知られています。

そのため、

「痩せているから糖代謝は大丈夫」

とも限りません。

体重だけで判断するのではなく、

食生活
筋肉量
内臓脂肪
肝臓への脂肪蓄積
運動
睡眠
ストレス

なども一緒に考える必要があります。

肝臓もインスリン抵抗性に関係する

インスリンというと、

「血糖を筋肉に取り込ませるホルモン」

というイメージが強いかもしれません。

しかし、

肝臓

も非常に重要です。

肝臓には、食事をしていない時間にも血糖値が下がりすぎないよう、蓄えていた糖を血液中へ送り出す働きがあります。

インスリンは、この肝臓からの糖の放出も調節しています。

ところが肝臓でインスリンが効きにくくなると、血糖値が十分にあるにもかかわらず、肝臓から糖が出やすくなることがあります。

そのため、

インスリン抵抗性は「膵臓だけの問題」でも「血糖値だけの問題」でもありません。

筋肉・肝臓・脂肪組織など、全身の代謝の問題として考える必要があります。

肝臓に脂肪がたまることとの関係

肝臓に脂肪が過剰に蓄積する、いわゆる脂肪肝もインスリン抵抗性と深く関係します。

特に、

甘い飲み物
お菓子
過剰なエネルギー摂取
運動不足
内臓脂肪の増加

などが重なると、肝臓へ脂肪が蓄積しやすくなります。

そして、

インスリン抵抗性
↓
肝臓の脂質代謝が乱れる
↓
さらにインスリン抵抗性が強くなる

という悪循環になることがあります。

ですから当院では、糖代謝を見るときにも肝臓の状態を大切にしています。

「糖質を食べたからインスリン抵抗性になる」ではない

ここは誤解してほしくないところです。

インスリンは糖質を食べると分泌されます。

そのため、

「インスリンが出る」
↓
「インスリンは悪い」
↓
「糖質を食べなければいい」

と考えられることがあります。

しかし、

インスリンが分泌されること自体は正常な生理反応です。

ご飯を食べる。

血糖値が上がる。

インスリンが出る。

筋肉が糖を取り込む。

これは本来、身体に備わった正常な仕組みです。

問題なのは、

インスリンが出ることではなく、インスリンが効きにくくなっていること

です。

ご飯と甘い飲み物を同じに考えない

当院では、

「糖質」

という言葉だけで食品をまとめないようにしています。

例えば、

ご飯を食べることと、

果糖ブドウ糖液糖や砂糖を多く含む清涼飲料水を飲むことでは、

身体への入り方が違います。

甘い飲み物なら、短時間に大量の糖を摂取することができます。

しかも液体なので、満腹感も得にくくなります。

一方、ご飯は通常、

魚
肉
卵
豆腐
味噌汁
野菜
海藻

などと一緒に食べます。

食事全体として考える必要があります。

当院では、

ご飯を怖がるより、精製された糖を日常的に大量摂取しないこと

を大切にしています。

筋肉は大きな「糖の利用場所」

インスリン抵抗性を考えるうえで、もう一つ非常に重要なのが、

筋肉

です。

食後の糖を処理するうえで、骨格筋は重要な役割を担っています。

つまり筋肉は、

糖を使う大きな場所

でもあります。

そのため、

歩く
身体を動かす
筋力を維持する

ことは、糖代謝を考えるうえでとても重要です。

食事だけを変えるのではなく、

身体が糖を使う場所をしっかり作る

ことも必要です。

睡眠不足でもインスリンが効きにくくなる

意外と見落とされるのが、

睡眠

です。

睡眠不足が続くと、インスリン感受性が低下することが研究されています。

つまり、

食事はかなり気をつけているのに、

毎日5時間しか寝ていない。

夜中に何度も目が覚める。

強いストレスが続いている。

という状態では、食事だけを改善しても糖代謝が整いにくい場合があります。

これは当院が自律神経や睡眠を重視している理由でもあります。

ストレスと血糖値

ストレスがかかると、

アドレナリン
コルチゾール

などのホルモンが働きます。

これは危険から身体を守るための正常な反応です。

身体はすぐにエネルギーを使えるように、血液中へ糖を供給します。

短時間なら問題ありません。

しかし慢性的なストレスや睡眠不足が続けば、

糖代謝にも影響する可能性があります。

ですから、

「甘いものを食べているから血糖値が高い」

という食事だけの話ではありません。

身体全体を見る必要があります。

食後の眠気や疲労はインスリン抵抗性なの?

患者さんから、

「食後に眠くなります。インスリン抵抗性でしょうか?」

と聞かれることがあります。

食後の眠気だけでインスリン抵抗性を判断することはできません。

食事量
睡眠不足
食事内容
血糖変動
自律神経
食後の消化反応

など、さまざまな原因が考えられるからです。

ただ、

食後に強烈に眠くなる
食後すぐに甘いものが欲しくなる
空腹になると強くイライラする
食事を抜くと極端に調子が悪い

などが繰り返される場合には、

食生活や糖代謝を一度見直すきっかけにはなります。

症状一つで診断するのではなく、

身体からのサインとして考える

ことが大切です。

血液検査は一つの数字だけを見ない

血糖値を見るときも、

空腹時血糖だけではなく、

HbA1c
中性脂肪
HDLコレステロール
肝機能関連
体重・腹囲

など、複数の情報を組み合わせて考えます。

必要に応じて医療機関では、

空腹時インスリン
経口ブドウ糖負荷試験

などを調べることもあります。

ただし、検査値は、

食事
絶食時間
脱水
運動
睡眠
ストレス
貧血

などによって見え方が変わるものもあります。

そのため、

一つの数字から身体全体を決めつけない

ことが重要です。

血糖値が上がったから、さらに糖質を減らす?

ここにも注意が必要です。

長期間かなり糖質を減らしていると、身体は脂肪酸を多く利用する方向へ適応します。

その状態で突然まとまった糖質を食べると、一時的に血糖反応が大きくなる場合があります。

その血糖値だけを見て、

「やっぱり糖質が合わない」

と判断して、さらに糖質を減らしてしまうことがあります。

しかし、

血糖値が上がった=糖質を食べすぎている

とは限りません。

その人が普段どのような食事をしているのかまで含めて考える必要があります。

大切なのは「インスリンを出さない身体」ではない

インスリン抵抗性を改善するというと、

「インスリンをなるべく出さないようにする」

と考えがちです。

しかし当院では、

必要なときにインスリンが出て、そのインスリンに身体がきちんと反応できること

のほうが大切だと考えています。

ご飯を食べる。

インスリンが出る。

筋肉が糖を取り込む。

肝臓が適切に糖を処理する。

食間になれば脂肪酸も利用する。

このように、

糖と脂質を状況に応じて使い分けられる身体

が理想です。

インスリン抵抗性を考えるときの基本

特別な食品を食べる必要はありません。

まず、

甘い飲み物を日常的に飲まない。

お菓子や菓子パンに食事が偏らない。

ご飯を適量食べる。

魚・肉・卵・大豆製品を食べる。

野菜、海藻、きのこなどを取り入れる。

身体を動かす。

睡眠を確保する。

ストレスをため込みすぎない。

こうした基本が重要です。

サプリメントを追加する前に、

身体が糖をきちんと利用できる環境を整える

ことを考えてみてください。

まとめ

インスリン抵抗性とは、

インスリンが出ているのに、身体がその作用に反応しにくくなっている状態

です。

初期には膵臓がたくさんインスリンを分泌することで、血糖値が正常に保たれている場合もあります。

そのため、

血糖値が正常=糖代謝に何の問題もない

とは必ずしも言い切れません。

そしてインスリン抵抗性は、

糖質だけの問題でもありません。

肝臓
筋肉
内臓脂肪
運動
睡眠
ストレス
食生活

などが複雑に関係しています。

だから、

「糖質を食べたら血糖値が上がったから、ご飯をやめる」

という単純な話ではありません。

当院では、

糖質を避ける身体を作るのではなく、糖質をきちんと利用できる身体を作る

ことを大切にしています。

精製された糖の摂りすぎを減らし、

ご飯を中心に、魚、肉、卵、大豆製品、野菜、海藻、きのこなどを組み合わせる。

そして身体を動かし、しっかり眠る。

インスリン抵抗性を考えることは、

「何を食べてはいけないか」を探すことではなく、「身体がエネルギーを上手に使える状態を取り戻すこと」

なのだと思います。

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